ご家族、またはご自分のこのような症状でお困りではありませんか?
□さっきまでしていたことを思い出せない
□同じことを何度も言ったり、尋ねたりする
□知り合いの顔がわからない、名前をよく間違える
□水道の蛇口の閉め忘れ、ガスコンロの火の付けっぱなし
□日付や曜日、季節がわからない
□行き慣れた場所の道順を思い出せず、道に迷うことが多い
□買い物ができない、お金の管理ができない
□通帳などをしまった場所が思い出せない
□テレビの内容を理解できない
□料理の順序がわからない
□怒りっぽくなった
加齢によるもの忘れと認知症の違いは?
加齢によるもの忘れは体験した出来事を部分的に忘れますが、何らかのヒントにより思い出すことができます。しかも、忘れたことを自覚しています。一方、認知症によるもの忘れは体験した出来事をまるごと忘れてしまい、ヒントなどのきっかけを与えても思い出すことはできませんし、忘れたということも自覚できません。そのため、加齢によるもの忘れは日常生活に大きな影響をおよぼしませんが、認知症によるもの忘れは日常生活に大きく支障をきたしてしまいます。
こうやって書いてみると簡単に区別できそうですが、軽い認知症の場合は加齢によるもの忘れと区別するのに難しいことがあります。
また、健常者と認知症の谷間、つまり、認知症じゃなさそうだけど正常とも言い切れないグレイゾーンの位置にある状態を軽度認知障害と言います。この場合、時間の経過と共に認知症に進む可能性もありますので、慎重に経過を見る必要があります。
診断に必要なこと(当院で可能なもの)
問診
ご本人とご家族にもの忘れのエピソード、もの忘れ以外の症状や持病、飲んでいる薬などについて詳しくお聞きします。
認知機能検査
現時点での認知機能が認知症に相当するのかどうかを判断する質問形式のテストを行います。
血液検査
もの忘れの原因が内科の病気のこともありますので、血液検査でそれらの病気がないかをチェックします。
MRI検査
MRIで脳血管障害や認知症以外の原因がもの忘れに関与していないかを判断します。また、VSRADという認知症診断支援システムを用いて、認知症の可能性があるかどうかの参考にします。
認知症の種類
日本の認知症の方の割合は65歳以上では4-11%程度と言われており、決して少ない数字ではありません。
認知症の種類をその頻度順に3つ挙げると、1.アルツハイマー病、2.血管性認知症、3.レビー小体型認知症となります。その中でもアルツハイマー病が全体の2/3を占めます。
アルツハイマー病
原因は不明ですが、徐々に脳の神経細胞が失われていき、脳が徐々に小さくなります。
典型的には最初は最近の出来事を忘れる、以前と比べて感情の変化が乏しくなるなどの人格の変化が見られます。そのうち、過去の出来事や親しい人の名前も思い出しにくくなり、食事、着替えなどの身の回りのことに介助が必要になります。根本的な治療はありませんが、薬により進行を遅らせる可能性はあります。
血管性認知症
主には脳卒中や動脈硬化によって脳に血液を送る血管が障害されることで起こる認知症で、脳卒中を起こすたびに、あるいは動脈硬化が進行する過程で症状が悪くなります。一度、悪くなった症状が完全に元に戻る可能性は少ないのですが、アルツハイマー病と異なり、ご自身の努力で脳卒中を予防したり、動脈硬化を進行させる生活習慣病などを上手に管理できれば症状を悪くすることを遅らせる可能性があります。
レビー小体型認知症
基本的にはアルツハイマー病と同様に進行する認知症ですが、特徴的な症状が見られます。例えば、幻覚が見えやすい、精神症状が変動しやすい(急にボーッとしたり、また元の状態に戻ったり)、寝てる時に大声を出したり、叩いたり蹴ったりする動作が見られるなどの特徴がアルツハイマー病に比べて見られやすいです。また、動きが遅くなるなどのパーキンソン病の症状が現れることがあります。アルツハイマー病と同様に根本的な治療はありません。
治るもの忘れもあります
上に挙げたような認知症は脳の神経細胞が障害され、現在の医療では根本的に治療することはできません。しかし、もの忘れを認める方の中には、他の病気の影響で長期間のもの忘れが出現していることもあり、その病気を治療することでもの忘れが治る場合もあります。
画像検査では慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などが見つかることがあり、手術により改善する可能性があります。
血液検査ではビタミン不足、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、低血糖、電解質異常などが判明することがあり、それぞれを補ったりするなどの調整を行うことでもの忘れが良くなる可能性があります。
また、睡眠導入剤や安定剤などの薬が認知機能に影響をおよぼしている可能性があるため、減量および中止することにより認知機能の改善が見られる可能性があります。
当院ではこのような病気を見逃さないため、もの忘れの訴えで来院された方に画像検査と血液検査、使用している薬のチェックを行います。
頭痛、めまい、もの忘れなどの症状のある方は、
保険を使用してMRIの撮像が可能です。