緊張型頭痛が起こった時はどうすることがいいのでしょうか.
緊張型頭痛の場合,特に日常生活に何も支障が出ない軽度な頭痛が多いので様子を見ていても構わないと思いますが,中には我慢しながら生活している中等度以上の頭痛の場合もあります.
その場合,温湿布という種類の貼付剤を肩や首に貼るのは効果的です.
また,いわゆる痛み止めを使用しても構いません.
市販薬でも大丈夫ですが,軽い頭痛にも簡単に使用してしまうといつの間にか頭痛の回数が増えていってしまう可能性がありますので,使い過ぎには充分気をつけてください.
これまでに緊張型頭痛と言われていたけど,実は片頭痛だったということもありますので,頭痛でお悩みの方はお気軽にご相談ください.
緊張型頭痛の背景には
①運動不足
②悪い姿勢(パソコン業務,手芸などの手先を使う作業)
③強いストレスや不安などの心理的要因
が存在していることが多いです.
肩こりを持っていることも多いですが,肩こりを自覚できない場合でも自分で触れる部分としては,こめかみ,首と後頭部の境目を押すと鈍い痛みがある場合が多いです.
ただし,この肩こりや押すと痛む部分があるからといって短絡的に緊張型頭痛と決めつけてはいけません.
片頭痛でも認めることがありますし,他の頭痛に緊張型頭痛が合併していることもあるからです.
また,以下の様な病気を持っていると緊張型頭痛を起こしやすい場合があります.
整形外科:頸椎症,むちうち症の既往,腰痛,膝痛
歯科口腔外科:虫歯,歯肉炎,親知らず,噛み合わせが悪い,顎関節症,歯ぎしり
眼科:遠視,近視,合っていない眼鏡
耳鼻咽喉科:副鼻腔炎,難聴
心療内科:うつ状態,不安神経症,不眠症
これらの病気をお持ちの方はその病気を治療することが頭痛の改善につながる可能性もありますので,専門の医療機関を受診してみてください.
ご自身では自分の頭痛がどの頭痛に当てはまるかわからない場合もあるとは思いますので,いつでもお気軽にご相談ください.
緊張型頭痛にはその頻度によって下記のように名称が異なります.
1ヶ月に1回未満(年間12日未満)→稀発反復性緊張型頭痛
1ヶ月に1-14日→頻発反復性緊張型頭痛
1ヶ月に15日以上→慢性緊張型頭痛
慢性緊張型頭痛は「3ヶ月を超えて」という条件が付きます.
前回のブログでも書きましたように,緊張型頭痛はそこまで日常生活に支障がないため医療機関を受診することことはあまりないのですが,慢性緊張型頭痛は異なります.
慢性緊張型頭痛は100人につき約1.5人いらっしゃるという統計があり,そのうち約4割の方は日常生活に支障をきたしているとのことです.
そのため,慢性緊張型頭痛だけは医療機関への受診率が73%とかなり高く,お困りの方が多いことがわかります.
一般的には緊張型頭痛では対症療法だけでも有効な場合が多いのですが,慢性緊張型頭痛には予防療法が必要な場合が多いため,お困りの方はご相談ください.
今回は緊張型頭痛についてお話しします.
緊張型頭痛とは頭痛の中でも最も頻度の高い頭痛で,生涯で経験したことがある人は30-78%と言われており,ご覧の皆様の中にも経験があるかもしれません.
この緊張型頭痛の診断の中に,緊張型頭痛の特徴に当てはまる頭痛が10回以上必要という項目があるため,それを満たさない「緊張型頭痛疑い」を含めるとほとんどの方が1度は当てはまりそうな頭痛です.
簡単に言うと,これまでに説明してきた片頭痛とは事なり,頭痛の最中に,吐き気や嘔吐を伴わない(軽い吐き気はあってもいいです),光過敏/音過敏はあってもどちらかだけある,比較的軽い頭痛です.
頭痛の性状としては頭が締め付けられる,頭が重いといった訴えが多いです.
頭痛はそこまで強くないので,なかなか医療機関を受診することはありませんが,むやみやたらに市販の頭痛薬を簡単に使用すると頭痛の回数が増えることがありますのでお気をつけください.
自分の頭痛が何の頭痛かわからない場合でも,受診いただければ適切な診断を行い,治療法や対処法をお教えできると思いますのでお気軽にご相談ください.
結構知られていないことですが,片頭痛には予防療法が存在します.
当院を受診いただいた方の中にもそのことをお話しすると初耳であったことは珍しくなく,早く知っておけばよかったとのコメントをいただくことも多いです.
その予防療法とは基本的にはお薬の内服です.
保険診療で使用可能な内服薬が数種類あり,それらのうち1つをを毎日内服します.
予防の目標は頭痛の頻度とその強さが治療前の半分以下になることです.
私自身は片頭痛を持っていないので実感できませんが,目標を達成するだけで生活のしやすさが大きく変わるようです.
予防薬にはそれぞれ効果の早さや副作用が異なるので,患者さんと話し合いながら薬を決定します.
人によってそれぞれの薬に合う合わないがありますので,何種類か試してようやく合う薬に出会うこともあります.
また,漢方が合う方もいらっしゃいますのでご相談いただければ幸いです.
尚,今年,片頭痛予防薬の新薬が発売されることになっており,片頭痛で本当に苦しんでいる方の救世主になりうる可能性が示されていますので,さらに治療選択肢の幅が広がります.
それぞれの予防薬の特色と患者さんの希望をうまくマッチさせて治療を行い,片頭痛と上手に付き合って生活いただければと思っています.
片頭痛の痛みがある時にはいわゆる痛み止めが使用されます.
軽い場合は市販薬などの頭痛薬でも改善することがありますが,使い過ぎは「薬剤の使用過多による頭痛」につながる可能性がありますのであまりお勧めいたしません.
片頭痛には専用の治療薬があります.
トリプタン製剤と言いますが,片頭痛専用のお薬ですので他の原因の頭痛には効果がありません(一部例外はありますが).
他にもエルゴタミン製剤があるのですが,副作用のため最近はあまり使用されていません.
お話を聞いて片頭痛の可能性が高ければ,そのトリプタン製剤を試していただきます.
効果があればやはり片頭痛であったということにもなりますので診断がより確実になります.
トリプタン製剤は内服薬が5種類,点鼻薬が1種類,皮下注射製剤が1種類あります.
点鼻薬と皮下注射製剤は内服薬よりも効果が早く出ますが,お値段が高めなのでなかなか最初から使う患者さんはいらっしゃいません.
内服薬も以前は値段が割と高かったのですが,現在はジェネリックが出ておりますので比較的使いやすくなったと思います.
内服薬もそれぞれに特徴があり状況に応じて使い分けますが,人によって合う合わないがありますので,色々と試しながらその方に合ったお薬を選びます.
お薬の調整にはコツが必要ですので,片頭痛の治療にお困りの場合は頭痛専門医による診療が望ましいかもしれません.
また,漢方も効果がありますのでいわゆるお薬が苦手な方もご相談ください.
片頭痛は精神疾患にも関与します.
特に不安障害や抑うつと関係している様です.
片頭痛の辛さ/キツさにより他の人と同じように生活や暮らしができないことが不安や落ち込みに影響しているものと思われます.
片頭痛と不安障害との関連についてはパニック障害(特に多い),全般性不安障害,恐怖症,強迫性障害が考えられています.
また抑うつに関しては,片頭痛における大うつ病の障害有病率は18-40%と比較的高く,年間有病率は8.6%と無視できない数字です.
精神疾患と片頭痛との関連では,前兆のある片頭痛,慢性的な片頭痛,薬剤の使用過多がある片頭痛との関連性が強く,頭痛の強さが強いまたは頻度が多いことが影響している印象です.
片頭痛に加えて精神疾患も合併してしまうと生活の質が著しく低下するため,片頭痛の治療を行うことは精神疾患の発症を抑えるためにも重要だと考えられます.
頭痛でお悩みの方は診断を早めに明らかにするためにも一度は専門医を受診することをお勧めします.
片頭痛の方の中には頭痛の前あるいは同時に神経症状が出現する「前兆」を自覚する方がいらっしゃいます.
「前兆」は片頭痛患者さんの3割程度に見られます.
最も頻度が多く有名なものには閃輝暗点という視覚症状があり,視野の中心あるいは周辺からキラキラとした鏡に反射した光の様なものが現れて,徐々にその範囲が大きくなります.
「前兆」には,他には体の片側などにしびれなどの感覚症状,言語障害などが含まれ,だいたい5分から60分続きます.
ちなみにこれらの前兆が見られる片頭痛と見られない片頭痛で治療は大きく変わることはありません(一部の病態は除く).
また,「予兆」と言われるものがあります.
「予兆」とは頭痛の前に起こり,「前兆」とは異なり,神経症状とは言いにくいものです.
例えば,だるさ,集中力低下,食欲の変化,感覚(光・音)過敏,首のコリ,首の痛み,吐き気,目のかすみ,生あくび,顔面蒼白などがあり,頭痛の数時間前〜1,2日前から出現し,最大で48時間続きます.
「前兆」と「予兆」の違いが分かりづらいかと思いますが,我々が片頭痛を診断する場合に気にする事なので,片頭痛をお持ちの方には『そう言えば頭痛の前に何かあるな』という事だけでも診察時にお伝えいただくと大変助かります.
話は「前兆」に戻りますが,中には頭痛がなくて「前兆」だけが現れる方もいらっしゃいます.
若い時に「前兆」を伴う片頭痛をお持ちの方が,お年を召して頭痛だけなくなって「前兆」だけ残る方もいらっしゃるのです.
しかし,これまで頭痛がなくて急に「前兆」のような神経症状だけが短時間続いて繰り返す場合は,一過性脳虚血発作という血管が一時的に詰まってしまう病気かもしれませんので早目に受診されてください.
少し難しい内容になりましたが,頭痛に限らず何か気になることがありましたらご相談ください.
片頭痛は一般的には20-40歳を超えると年齢が上がっていくに連れて回数が減ってきます.
しかし,中には回数が増加して月の半分以上に頭痛(片頭痛じゃなくて緊張型頭痛様の痛みでもいいです.ただし,片頭痛様の痛みは月に8回は見られます)が出現してしまい,慢性化してしまうことがあります.
慢性化の要因は下記のようなものが知られています.
①生まれつき/生まれる前の要因
a)家族歴:母親に慢性的な連日性の頭痛あり
b)出生前曝露:胎児期における母親の飲酒と喫煙
②頭痛の病状
元々の頭痛日数が多い
③共存症
a)肥満
b)いびきと睡眠時無呼吸
c)顎関節症
d)精神疾患(うつや不安)やストレスの多い生活(引越し・失業などのライフイベント)
④外的要因
a)過剰な鎮痛薬使用
b)カフェイン摂取
c)頭部外傷
①,②の改善は難しいですが,③,④についてはご自身の努力で改善できるものもあるのではないでしょうか.
特に「睡眠時無呼吸」については,自分では気が付いていないことも多いです.
当院でも簡易的に睡眠時無呼吸の検査を行う事ができますので,頭痛の回数が多い場合や他の人から「いびきしてたよ」,「寝てる時に呼吸が止まってたよ」と指摘されたことがある場合はご相談ください.
また,知らず知らずのうちにカフェインを多く摂っていることも要注意です.
コーヒーは特に量が多いですが,カフェインが入っているお茶もありますし,お仕事を頑張っている方で「もう一踏ん張り!」と飲まれているエナジードリンクにもカフェインが多く含まれていますのでお気をつけください.
最後に,痛みに対してついつい鎮痛薬を毎回使用してしまう方もいらっしゃると思いますが,過剰な使用は逆に次の頭痛を起こしやすくなりますので気をつけてください.
以前にも記載していますが,片頭痛の予防薬を使用することで頭痛の回数を減らし,頭痛の強さを弱めることができますので,頭痛が多くて辛い場合はご相談ください.
片頭痛を持っている方が多いのはどの年代でしょうか.
少し前のデータにはなりますが,性別により多少異なります.
女性で最も多いのは30代で約20%,次に40代で約17%
男性で最も多いのは20代で約9%,次に30代で約8%
と若い世代に特に多い疾患となります.
それぞれ,上記の年代をピークとした後,年代が上がって行くに連れ徐々に片頭痛を持つ人は減っていきます.
実際,60代では男性の有病率は1%程度なのですが,女性では60代でも約9%いらっしゃいますので,女性の場合は頭痛でお越しいただいたご年齢の高めの方でも片頭痛は全然否定できないのです.
最初の片頭痛発作に関しては,大多数の方は30歳以下で起き,特に中高生に多いですので,ご年齢が高めで初めて頭痛に対して受診された方でも,思い返してみると学生の時からの片頭痛だったということもよくあります.
ただし,40歳以上で片頭痛の様な頭痛が新たに出現した場合,脳血管奇形が隠れていたりすることもあります.
そのため,MRIなどの画像検査を検討する必要がありますので,ご相談ください.
最後に,学生の片頭痛の有病率は中学生で4.8%,高校生で9.8%であり,片頭痛で悩んでいる学生さんは結構いらっしゃいます.
中には頭痛による不調で学校に行くのが辛いという方もいらっしゃいますが,実は片頭痛であり予防薬と急性期治療薬により改善することもあります.
当院では小児から学生さんの頭痛にも対応しておりますので,お困りの場合はご相談ください.