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片頭痛(11):片頭痛の予防療法

結構知られていないことですが,片頭痛には予防療法が存在します.

 

当院を受診いただいた方の中にもそのことをお話しすると初耳であったことは珍しくなく,早く知っておけばよかったとのコメントをいただくことも多いです.

 

その予防療法とは基本的にはお薬の内服です.

 

保険診療で使用可能な内服薬が数種類あり,それらのうち1つをを毎日内服します.

 

予防の目標は頭痛の頻度とその強さが治療前の半分以下になることです.

 

私自身は片頭痛を持っていないので実感できませんが,目標を達成するだけで生活のしやすさが大きく変わるようです.

 

予防薬にはそれぞれ効果の早さや副作用が異なるので,患者さんと話し合いながら薬を決定します.

 

人によってそれぞれの薬に合う合わないがありますので,何種類か試してようやく合う薬に出会うこともあります.

 

また,漢方が合う方もいらっしゃいますのでご相談いただければ幸いです.

 

尚,今年,片頭痛予防薬の新薬が発売されることになっており,片頭痛で本当に苦しんでいる方の救世主になりうる可能性が示されていますので,さらに治療選択肢の幅が広がります.

 

それぞれの予防薬の特色と患者さんの希望をうまくマッチさせて治療を行い,片頭痛と上手に付き合って生活いただければと思っています.

2021年03月29日
片頭痛(10):片頭痛の治療

片頭痛の痛みがある時にはいわゆる痛み止めが使用されます.

 

軽い場合は市販薬などの頭痛薬でも改善することがありますが,使い過ぎは「薬剤の使用過多による頭痛」につながる可能性がありますのであまりお勧めいたしません.

 

片頭痛には専用の治療薬があります.

 

トリプタン製剤と言いますが,片頭痛専用のお薬ですので他の原因の頭痛には効果がありません(一部例外はありますが).

 

他にもエルゴタミン製剤があるのですが,副作用のため最近はあまり使用されていません.

 

お話を聞いて片頭痛の可能性が高ければ,そのトリプタン製剤を試していただきます.

 

効果があればやはり片頭痛であったということにもなりますので診断がより確実になります.

 

トリプタン製剤は内服薬が5種類,点鼻薬が1種類,皮下注射製剤が1種類あります.

 

点鼻薬と皮下注射製剤は内服薬よりも効果が早く出ますが,お値段が高めなのでなかなか最初から使う患者さんはいらっしゃいません.

 

内服薬も以前は値段が割と高かったのですが,現在はジェネリックが出ておりますので比較的使いやすくなったと思います.

 

内服薬もそれぞれに特徴があり状況に応じて使い分けますが,人によって合う合わないがありますので,色々と試しながらその方に合ったお薬を選びます.

 

お薬の調整にはコツが必要ですので,片頭痛の治療にお困りの場合は頭痛専門医による診療が望ましいかもしれません.

 

また,漢方も効果がありますのでいわゆるお薬が苦手な方もご相談ください.

2021年03月23日
片頭痛(9):片頭痛と精神疾患

片頭痛は精神疾患にも関与します.

 

特に不安障害や抑うつと関係している様です.

 

片頭痛の辛さ/キツさにより他の人と同じように生活や暮らしができないことが不安や落ち込みに影響しているものと思われます.

 

片頭痛と不安障害との関連についてはパニック障害(特に多い),全般性不安障害,恐怖症,強迫性障害が考えられています.

 

また抑うつに関しては,片頭痛における大うつ病の障害有病率は18-40%と比較的高く,年間有病率は8.6%と無視できない数字です.

 

精神疾患と片頭痛との関連では,前兆のある片頭痛,慢性的な片頭痛,薬剤の使用過多がある片頭痛との関連性が強く,頭痛の強さが強いまたは頻度が多いことが影響している印象です.

 

片頭痛に加えて精神疾患も合併してしまうと生活の質が著しく低下するため,片頭痛の治療を行うことは精神疾患の発症を抑えるためにも重要だと考えられます.

 

頭痛でお悩みの方は診断を早めに明らかにするためにも一度は専門医を受診することをお勧めします.

2021年03月16日
片頭痛(8):片頭痛の「前兆」と「予兆」

片頭痛の方の中には頭痛の前あるいは同時に神経症状が出現する「前兆」を自覚する方がいらっしゃいます.

 

「前兆」は片頭痛患者さんの3割程度に見られます.

 

最も頻度が多く有名なものには閃輝暗点という視覚症状があり,視野の中心あるいは周辺からキラキラとした鏡に反射した光の様なものが現れて,徐々にその範囲が大きくなります.

 

「前兆」には,他には体の片側などにしびれなどの感覚症状,言語障害などが含まれ,だいたい5分から60分続きます.

 

ちなみにこれらの前兆が見られる片頭痛と見られない片頭痛で治療は大きく変わることはありません(一部の病態は除く).

 

また,「予兆」と言われるものがあります.

 

「予兆」とは頭痛の前に起こり,「前兆」とは異なり,神経症状とは言いにくいものです.

 

例えば,だるさ,集中力低下,食欲の変化,感覚(光・音)過敏,首のコリ,首の痛み,吐き気,目のかすみ,生あくび,顔面蒼白などがあり,頭痛の数時間前〜1,2日前から出現し,最大で48時間続きます.

 

「前兆」と「予兆」の違いが分かりづらいかと思いますが,我々が片頭痛を診断する場合に気にする事なので,片頭痛をお持ちの方には『そう言えば頭痛の前に何かあるな』という事だけでも診察時にお伝えいただくと大変助かります.

 

話は「前兆」に戻りますが,中には頭痛がなくて「前兆」だけが現れる方もいらっしゃいます.

 

若い時に「前兆」を伴う片頭痛をお持ちの方が,お年を召して頭痛だけなくなって「前兆」だけ残る方もいらっしゃるのです.

 

しかし,これまで頭痛がなくて急に「前兆」のような神経症状だけが短時間続いて繰り返す場合は,一過性脳虚血発作という血管が一時的に詰まってしまう病気かもしれませんので早目に受診されてください.

 

少し難しい内容になりましたが,頭痛に限らず何か気になることがありましたらご相談ください.

2021年03月08日
片頭痛(7):片頭痛の慢性化

片頭痛は一般的には20-40歳を超えると年齢が上がっていくに連れて回数が減ってきます.

 

しかし,中には回数が増加して月の半分以上に頭痛(片頭痛じゃなくて緊張型頭痛様の痛みでもいいです.ただし,片頭痛様の痛みは月に8回は見られます)が出現してしまい,慢性化してしまうことがあります.

 

慢性化の要因は下記のようなものが知られています.

 

①生まれつき/生まれる前の要因

 a)家族歴:母親に慢性的な連日性の頭痛あり

 b)出生前曝露:胎児期における母親の飲酒と喫煙

 

②頭痛の病状

 元々の頭痛日数が多い

 

③共存症

 a)肥満

 b)いびきと睡眠時無呼吸

 c)顎関節症

 d)精神疾患(うつや不安)やストレスの多い生活(引越し・失業などのライフイベント)

 

④外的要因

 a)過剰な鎮痛薬使用

 b)カフェイン摂取

 c)頭部外傷

 

①,②の改善は難しいですが,③,④についてはご自身の努力で改善できるものもあるのではないでしょうか.

 

特に「睡眠時無呼吸」については,自分では気が付いていないことも多いです.

 

当院でも簡易的に睡眠時無呼吸の検査を行う事ができますので,頭痛の回数が多い場合や他の人から「いびきしてたよ」,「寝てる時に呼吸が止まってたよ」と指摘されたことがある場合はご相談ください.

 

また,知らず知らずのうちにカフェインを多く摂っていることも要注意です.

 

コーヒーは特に量が多いですが,カフェインが入っているお茶もありますし,お仕事を頑張っている方で「もう一踏ん張り!」と飲まれているエナジードリンクにもカフェインが多く含まれていますのでお気をつけください.

 

最後に,痛みに対してついつい鎮痛薬を毎回使用してしまう方もいらっしゃると思いますが,過剰な使用は逆に次の頭痛を起こしやすくなりますので気をつけてください.

 

以前にも記載していますが,片頭痛の予防薬を使用することで頭痛の回数を減らし,頭痛の強さを弱めることができますので,頭痛が多くて辛い場合はご相談ください.

2021年03月01日